九州最南端の佐多岬から南南西へ約60kmの洋上に浮かぶ屋久島は、周囲が約130kmの、日本で7番目に大きな島。
海上から空に突き出たように山がそそり立ちます。屋久島は九州最高峰で日本百名山に数えられる宮之浦岳を筆頭に、1000m級の山々が40以上も連なります。そのため洋上のアルプスとも称されるほどで、それぞれの山で個性的な美しさを堪能することができ、山歩きの楽しさは尽きることはありません。
屋久島は今から1400万年前、海底の堆積岩にマグマが入り込み、花崗岩になって隆起してできた島。そのため山岳地帯では、花崗岩が削られてできた、芸術作品のような自然の造形に出会うことができます。島の随所で見る滝も、そうした島の成り立ちから生まれたものです。
花崗岩の地盤は、屋久杉の成長にも大きく影響しています。土は栄養分が乏しいため、杉はゆっくりと成長。おかげで緻密で高い強度の材質となり、屋久杉は樹齢数千年の寿命を得ることができました。
屋久杉と尊称される巨木が育つのは、島の中でも標高500～1600m辺りの深い原生林です。屋久島では樹齢数百年の若木を小杉と呼び、屋久杉の称号は樹齢1000年を超えるものに与えられます。
樹齢7200年ともいわれる縄文杉や、縄文杉が1966年に発見されるまでは最高樹齢とみられていた大王杉など、有名な屋久杉が数多く点在しています。
しかし私たちが見ていただきたいのは、そうした名高い屋久杉だけではありません。名もない巨木が静かに迎えてくれる森。そこでは豊かな雨の恵みと降り注ぐ光を受けて、倒木から新しい生命が背伸びするように芽吹いています。
野生のサルやシカがその森を揺りかごに生きています。それは太古から続く、生命の循環。
そうした生命の営みを目の当たりにできるのも、森の魅力のひとつです。
深い森の中では日光が遮られ、杉の小さな種子はなかなか発芽することができません。ところが、台風などの自然災害の影響で巨木が倒れたり、伐採が行われるとそこに光が当たり、芽生えるチャンスが訪れます。
屋久島の森では、倒木や切り株から新たな杉が成長した更新を数多く見ることができますので、見逃さないようにしたいものです。森では、植物が樹木に根を下ろして育っていく着生も目にすることができます。たとえばヤマグルマは、屋久杉の幹に根を絡ませて成長。その成長の過程で杉を枯らしてしまうこともあるほどです。
ほかにも江戸時代に屋久杉を伐採する際に、木の材質を判断するために行った試し切りの跡や、木と木が癒着して成長した合体木などにも出会えます。
屋久島は「ひと月のうち35日は雨が降る」と形容されるほど雨の多い島。
黒潮の流れが運んだ温かい水蒸気は急峻な山肌を駆け上って雨雲になり、大量の雨をもたらします。その雨は川となって森をめぐり、さまざまな生命を育み、海にたどり着いたら再び水蒸気となって天上へ。森は自らも水蒸気を発し、この絶え間ない水の循環の中心を成しています。雨は屋久島の象徴。雨の日こそ、この島の山歩きは気持ちがいいのです。雨に濡れた草木は青々と輝き、葉を打つ雨音は森が楽しく会話しているようにも聞こえます。
苔たちは水を含んでふかふかで、そっと触れてみるのも貴重な体験。森の生命力を、雨の日こそ感じることでしょう。
サンゴの海に浮かぶ屋久島は暖かい南国のイメージを持たれがちですが、標高1936mの宮之浦岳をはじめとした山間部では雪が降るほど。平地は年間平均気温20度くらいの亜熱帯の気候であるのに対し、山を登るほどに気温が低くなり、山頂付近では6℃と北海道並みの気温で、亜寒帯の気候に近くなります。
日本列島が凝縮されているといわれるその幅広い気候によって、屋久島では多様性に富んだ植生分布をつくりだしています。高山に咲くヤクシマシャクナゲやヤクシマミツバツツジなどは、厳しい環境に適応して進化した屋久島の固有種。
一方浜辺では、種子が海流によって運ばれてきたグンバイヒルガオやハマユウの花が咲き、洋上に浮かぶ島ならではのロマンに溢れています。
黒潮の通り道となる屋久島の海は、熱帯魚や回遊魚が出会い、他に例を見ないほど魚の種類が豊富。
魚の種類コンテストで日本一になったこともある、青く澄んだ海が広がります。サンゴに寄りそうように集まる熱帯の魚たちと戯れたり、ローニンアジなどの大型回遊魚に出合うことも。
本格的なダイビングでなくても、シュノーケリングで手軽に海を満喫することができます。
株式会社 屋久島ガイド協会
株式会社 屋久島ツアーズ
